こんにちは。
大松矯正歯科クリニックの高 大松(”Dr コウ”)です。
皆さん、お元気ですか?
セルフライゲーション型マルチブラケット装置(デイモンシステム)でも症例によって抜歯をしなければいけない場合があります。
○骨格性の問題が著しく大きい場合
○プロファイル(口元のバランス)を積極的に改善する必要がある場合
○前歯の傾斜が過度にきつい場合
○叢生が非常にきつい場合
などです。
ほとんどのケースで非抜歯治療が可能ですが、無理に非抜歯治療を行うとそのデメリットが発生することがあります。
抜歯治療が必要な症例の場合、患者さまと診断時に非抜歯で治療した場合と抜歯で治療した場合のそれぞれのメリットとデメリットをお話して、治療方針を決定して行きます。
最終決定は患者さまにして頂きます。
抜歯が必要な一例
20代 女性
骨格性上顎前突症(下顎骨の劣成長による)
前歯の前方への傾斜がきつい
そのため前歯の突出感がある(出っ歯の状態)
プロファイル:凸(とつ)型/お顔の中で口元が出ている感じ
診断時の口腔内写真
側方セファログラム
プロフィログラム
赤:患者さまの骨格 黒:日本人女性の平均的骨格
症例の解説
一般的に『出っ歯』と呼ばれる症状ですが、その原因(成り立ち)が骨格性に由来したものです。
『出っ歯』と呼ばれる症状は上の前歯が前方に突き出ている、歯が出ているイメージがあります。
しかし、症状によっては上の前歯の出っ張りがなくても、骨格性に原因がある場合に同じように『出っ歯』に見えることがあります。
骨格性の中にも上顎が大きいために骨自体がお顔の中で前に位置している場合や
その逆で下顎が小さいために上顎が前に出ているように見える場合があります。
また、上が少し大きくて、下が少し小さい両方に問題がある場合もあります。
この患者さまの場合、口腔内写真だけを見ると
『出っ歯』の原因が上の前歯の強い前方への傾斜によるものに見えますが
精密検査をしてみると下顎が小さいために上顎が前に出ているように見えます。
それも骨格性の問題が大きなウェイトを占めていることが判ります。
年齢的に骨の成長は見込めませんので、歯並びで骨格をカモフラージュする矯正治療を行うか
外科的手術を併用して下顎自体を前に移動する外科矯正のどちらかを選択します。
成長期前にご来院いただければ、成長を阻害している因子を矯正歯科的に取り除くことで成長を誘導することも可能でした。
今回、患者さまとご相談の結果、外科的な処置は回避して矯正治療単独で治すことになりました。
治療するにあたっては、骨のズレを歯並びで補正するためにやむを得ず上顎の歯を2本抜歯して対応することになりました。
通常、抜歯症例の場合上下左右対称的に歯を4本抜歯するのがルーティーンなやり方です。
この様なケースでは変則的に片側だけの歯を2本抜いて治療を行います。
(片側抜歯/へんがくばっし)
セルフライゲーション型マルチブラケット装置(デイモンシステム)でも原因によって抜歯をしないと患者さまのご希望している治療結果が得られないこともあります。
これから矯正治療をお受けになる方は治療前に主治医と治療の内容と治療のゴールについてとことん話し合ってから、よくご理解頂いてから治療をお受け下さい!